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【デレマス】 鷺沢文香に失恋した青年の話。

   

【デレマス】 鷺沢文香に失恋した青年の話。

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1以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/26(日) 03:14:43.32 ID:NY0MWW/p0


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 今になって思えば、それは一目惚れだったのだろう。

 大学から少し離れた場所にある古書店。僕は読書家というわけではなかったが、『古書店』という響きがなんだか格好良く感じたという理由だけでそこに入った。

 そこには数多くの本が置いてあったが、ほこり臭かったりはせず、本も綺麗なものがそろっていて、温かみのようなものを感じた。非常に良い雰囲気の店だったが、それは意図的なものではなく、この店の主が本当に本を愛しているということの表れでしかないのだろう……そう思えるような店だった。

 こんなところにこんな店があるなんて……そう思うと、僕はある種の興奮を覚えた。少年心と言うと違うかもしれないが、それに近い。僕は高揚した気分で古書店内を見回して……そして、彼女を見た。

 カウンターの中でひとり、本を読んでいる女性。長い黒髪は目元を覆い、その顔を窺い知ることはできない。

 僕は彼女に目を奪われた。その時はその理由がわからなかった。この古書店自体に高揚していたこともあり、それと同じものとして扱っていた。

 本を見て、彼女を見て、本を見て、彼女を見て……しかし、彼女がこちらに気付くことはなかった。読書に集中しているようだ。ぺらり……ぺらり……。そんな音だけが聞こえた。

 いつまで経っても彼女がこちらを見ないので、僕はどうにか彼女に自分の存在を気付いてほしいと思うようになった。それは意地のようなもので、また、答えがはっきりしているものだった。

 僕は適当に良さそうな本を手に取って、カウンターに向かった。しかし、それでも彼女は僕に気付かない。僕は声をかけた。「あの、すみません」

 すると、彼女の本をめくる手がぴく、と動いた。動いて、ゆっくりとこちらを見た。

「……すみません。本に集中していて、気付きませんでした」

 正直に言うのか、と思った。いや、嘘を吐いてもすぐにバレるのだが……それでも、そのまま言うとは思わなかった。

「これ、えっと……買いたいんですが。お願いします」

 僕は本を差し出した。彼女は本を手に取って、値段を口にした。僕は財布から言われた値段をちょうど取り出して彼女に手渡した。

「ありがとうございました」

 彼女の言葉を受けて、僕は古書店を出た。

 ……買うつもりは、なかったんだけど。

 僕は手に持った本を見た。

 ……でも、まあ、せっかく買ったんだから、読んでみるか。

 そう思って、僕は自宅に帰り、本を開いた。

 古書店のことと彼女のことを、思いながら。

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